Column Column

3代目社長のつぶやき

設備屋も
BARにいる
part10

【part9から続く】

BARそしてバーテンダー氏とは。
その日、その時の出会いを大事に。

予約を入れず行くのが、オレの主義。
偶然、入ったそのBARのひと時は。

仲間との夜を十二分に彩ってくれた。

そんな一期一会、出会いとふれあい。

星や評判より、訪れた人や酒に接する所作の美しさ。
オレがバーテンター氏に求めてしまうのは、これだ。

中には、評判と所作の美しさを兼ね備えた人もいる。

世界的な名人の所作は、人にも酒にも。
凛として本当に美しかった。

北陸のこの地で、オレがBARやバーテンダー氏に望むのも。
ナンバーワンという評判より、そんな美しさだった。

オレは目の前にいる若きバーテンダー氏に美しさを感じていた。

そんな想いが頭をめぐり、仲間との会話がふと切れた瞬間。
あるベテランバーテンター氏との出会いを思い出した。

本格的な冬が訪れる直前の北の大地。
街を一歩出ればどこまでも平原が続く。

その日、会合と懇親会を終えて。
オレは、あるBARに目を付けていた。

道を尋ねた地元の人に「入ったことがない」と言われたビル。大通りから外れた一角の地下に目あてのBARはあった。

この地方で最大の都市、内地の杜の都に続く北を代表するこの街。京都を模した碁盤の目の中で、静かに時を刻んできたBAR。

そのベテランバーテンター氏も。

評判と所作の美しさを兼ね備えていた人だった。

外の寒さを忘れされてくれるように。
一見のオレたちを。
BAR経験の浅い仲間を。

温かく迎えてくれた。

そして供された一杯は心を満たし。階段下で見送り一礼する姿は品があり、美しかった。

北陸の古都、このBARのこの若きバーテンダー氏も。
北の大地、あのベテランバーテンター氏と同じ香りがした。

次にもし、古都に訪れたなら。

バーテンダーがその日の最初のカクテルを作り、
まっさらなコースターに載せる。

隣に小さく折り畳んだナプキンを添える。
その一杯をゆっくり味わうのが好きだ。

しんとしたBARで味わう最初の静かなカクテル、何ものにも代えがたい・・・

そんな体験するために、再訪すると心に誓って。
仲間との旅は、走馬灯の如く北陸の夜を駆け抜けていった。

【第3話 終了】