【part8から続く】
その日。
オレは仲間と旅に出ていた。
初春の北陸。
車窓から見る山は、
まだ冬に閉ざされていた。
到着後すぐ、名物のおでんと地酒を。
観光後は、近くの茶屋で地ビールを。
夜は、地魚や郷土料理と地酒で・・・。
下地は出来た。オレたちは名店とされるBARへ向かった。
日本文化の華が開く古都、数多くのBARがあることでも有名な街。
その中でもナンバーワンと称されるこの店は、縁があるようでない。
最初は銀座のとある一角。
白のバーコートに身を包んだ女性バーテンダー氏がいた。
このBARのことは、別の物語でいつの日か紡ぐが・・・。
彼女はある日を境に、銀座での経験を糧に。
父親の営む古都のBARへ帰っていった。
数年前、その彼女がどうしているかと訪れた。しかしその時は満席で門前払い、そして今回も。
開店前にも関わらず、予約で満席だといわれる。
なるほど。この店とは縁がないことをオレは悟った。
さて。どうしよう・・・こよなくバーを愛する相棒に道案内を任せて。
繁華街の中心から少し外れたウラ道を看板と店構えを頼りに彷徨した。
しばらくして。
相棒が扉の一つを開けた。
宵闇に紛れるように佇み、外から伺い知れない扉の向こうで。
オレが想像したよりも、ずっと若いバーテンダー氏がいた。
一見のオレたちを温かく迎え、BAR談義に華が開いた。
「ここ古都のBARとは縁がない」と折れかけたオレの心に。
1本のろうそくのような暖かみのある明かりが灯った。
【part10へ続く】