【part1からの続き】
どんな商売でもお客とプロの間には、一種の緊張感や
マナーが必要だ。
このような関係性にあると、互いの学びや経験になる。
たとえばBARでは、
何かしら好みを伝えてオーダーする。
オレは若い時に「酒の師匠」から学び、こう心得て。
今日までBARライフを楽しんできた。
たぶん、このベテランのオーナー氏も同じことを思ったのだろう。
アルコールには弱い方だ・・・飲んで来たから軽いものを・・・
何かフルーツを使ったものを・・・など。
そう。どんな形でもイイから、自分のリクエストを伝える。
それに応えるバーテンダー氏との会話を楽しみながら、
今宵の一杯を決める。
これがBARのBARたる楽しみでもある。
無論、当たり前だが。今回のことは。
それをしちゃダメだ!不躾だ!という話ではない。
最近の若いバーテンダー氏ならこの日のこのBARと同様、
にこやかに「おススメはですね・・・」と応えるだろう。
それゆえ「定食屋じゃない・・・」というオーナー氏のセリフは、
古き時代のBARとお客の関係性を物語っているかもしれないが。
ただ。あえてもう一つ。
この日の出来事について、別にどうでもイイおせっかいな話をしよう。
この男性、特に彼くらいの年齢なら、女性が「おススメ」と言う前に。
彼が女性の好みを聞きながらバーテンダー氏と会話。
女性のオーダーをサポートしてほしい。
なぜならBARの一つの楽しみ方に。
「男性は紳士として立居ふるまい、女性をエスコートする」
があるからだ。
重ねて言うが、楽しく、おいしく。
大人の節度を持ちながら過ごすなら何の問題もない。
近頃は「エスコートなんて面倒くさい!」と思う若い男や
セクハラ的なオッサンが増えた気もするが・・・。
それでもBARには。とりわけバーカウンターには。
女性をエスコートする男性が似合うとオレは言いたい。
「・・・これから来る依頼人が、
もしビールをチビチビ飲むような野郎だったら、
オレは仕事を絶対に受けない・・・」
探偵のマイク・ハマーが、とあるバーカウンターでつぶやく。
すると。そこに現れた依頼人は、意外にも色香の漂う妙齢な女性だった。
女性がBARに慣れてないことをハマーに告げると。
「彼女にはローゼスのジンジャーエール割り、
オレには同じもの・・・」
と。彼はバーテンダー氏にオーダーする。
これは、米国のミッキー・スピレイン氏が描いたハード・
ボイルド小説の一説。十代の頃、新書本で読んだ。
そう。別に紳士といっても、ジェントルだけの男ではない。
女性をエスコート、といってもナンパ目的でもない。
【part3へ続く】※画像はすべてイメージ画像です※