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3代目社長のつぶやき

設備屋もBARにいるpart7

【part6から続く】

「ね!おいしいでしょ!」・・・。

オレが飲むのを待ちかねたように、その男は言った。

オレは「なるほどね・・・」とつぶやき。

「珍しいものを飲ませてもらいました、ごちそうさま」と。
男に告げると、早々にそのBARを後にした・・・。

その後。しばらく経ってこのBARに再訪した時。

オレはバーテンダー氏にこの客のことをきいてみた。
どうやらオレが気遣うほどの常連ではなかったらしい。

ただウィスキーを楽しみ始めた若い人。
このオレの感は、あたっていたらしく。

「だとしたら、ああいう行為はたしなめて欲しい」と。
オレはバーテンダー氏にリクエストしてしまった・・・。

そう。してしまった、というのは。

「それはあなたがいけないんじゃない?
   そういう行為はBARになじまないってバーテンダーさんじゃなく、
               あなたぐらいの年令なら若い人に教えないとね」

この話をツレにした時にズバリ!と。
こう指摘され気づいたからだ。

バーテンダー氏が客を育み、客がバーテンダー氏を育む関係。
客同士もまた、経験や見識を尊重しながらお互いに育む関係。

これも古くから伝わるバー文化の一つ。
というか、酒場という文化の一つであった。

「いいか、酒の場は男を磨く場だ!」と。

大先輩からビールの継ぎ方、空のお銚子のあつかい方など。
酒の所作を教えられ、今のオレの礎となったことを思い出す。

その点、今夜。
オレとツレの目の前にいる若きバーテンダー氏は。

技術と共にバー文化もしっかり体現していた。

それは、この店のバックバーに飾られたマッチ。
1961年から続いていた隣町の今は亡きマイスター氏のBAR。

その店のオリジナル・マッチからも感じられた。

彼もまた、若かりし頃。
隣町のマイスター氏のBARに通っていた一人であった。

BARなど飲食業界に限らずどんな業界も。
人と人がつながることで、業界の良き文化や技術を広げ育んできている。

言い換えればどの業界もどんな会社も、その文化や技術のすべてが。
人と人がつながりカタチ作られているとも言えるだろう。

そしてプライベート、特にBARや酒場は。
まさに人と人のつながりだけで出来ている世界。

そんな同じ文化と薫りを身にまとうステキなヒトをエスコート。

まだギムレットには早すぎる夏の一夜。

Summertime And the living is easy~♪♪

もう少しの間、となりいて。
騒がしい世情からオレを離れさせて欲しい・・・。

今宵もまた。そんな夢を見ながら。

長いお別れ」ならぬ、
一夜の短い別れを惜しむように時を過ごそう。

【第2話 終了】